現代書館

この思い切った大改訂に合わせ、装幀もガラッと変えました。こちらは2度目の本格的変更で、デザイナーは初版以来同じ尾形まどかさん。雪だるまに足が生えたような、不思議な大小の白い生命体が、コロボックルのように葉っぱで雨をしのいでいるその横で白猫が天を仰いでいる、というイラスト。かわいいのに圧倒的なインパクトがあって、カバーラフは2種類送っていただきましたが、個人的には即決でこちらでした。最終的に、雨空の向こうに虹を描き加えていただき今のカバーになりました。リストラで子会社出向、子会社もつぶれて雇用保険で食いつなぐが、仕事がみつからないまま雇用保険切れで、アルバイト生活。一昨年のリーマンショックのなか、アルバイトの職も失いいよいよアパート代が払えなくなって福祉事務所へ…。「健康で文化的な最低限度の生活保障」という小さな傘(生活保護)でなんとか雨をしのいで落ち着いた生活を取り戻し、何十社応募しても年齢からどこもダメ、という雇用破壊状況を就労支援策で乗り越え、なんとかパートの仕事を見つける、という本書ストーリーの主人公(55歳)を象徴するようなイラストです。

本書が平積みになっている書店さんでは、小社の営業部が作ったポップを目にすることもあるかもしれません。生みの親の尾形さん曰く「正体不明の生き物」&白猫のイラストを使わせていただいています。尾形さんと相談して、この「正体不明の生き物」に「生活保護=最後のセーフティネット」の意味を込めて「セーフちゃん」と命名し、セーフちゃん増殖計画を練っています。

生活保護を利用しなくても、働ける人は働いて生活できたほうがいいのでしょう。しかし、どんなに働く意思があっても、現実の経済・雇用状況では一度正規職を失うと生活保護基準以上(ストーリーの主人公の場合、55歳、一人暮らし、アパート代基準額込みで14万円弱)の手取額を稼ぐのは簡単ではありませんし、医療費を考えればなおさらです。アルバイトやパートのダブルワーク・トリプルワークをしても、非正規で年金未加入、医療保険・雇用保険にも入れてもらえず、将来にリスクをかかえたまま身体が続く限り働くしかない「ワーキングプア」層が拡大しています。

反貧困ネットワークは貧困はみえないものであってはならないもの、ということから、貧困を象徴するおばけの"ヒンキー"を作り出し、ヒンキー撲滅キャンペーンを繰り広げています。ならば、最後のセーフティネット=生活保護のキャラクター"セーフちゃん"を増殖させ、本当に必要な人が生活保護を利用できるような制度運営になってほしいと考えました。
生活保護はスティグマを貼られ、できれば受けたくない、ベーシックインカムのようにもっと普遍的な基本所得にしてほしいという意見もあります。社会保障制度全体の見直しの中で、生活保護のあり方、運用についてももっと議論すべきなのでしょう。ただし、今の制度の中でもきちんと法律どおり運用されてないのですから(本書ではそうした実施機関側の問題に対しても、福祉事務所の現場の中から具体的に対処法を提案しています、これが本書の特長です)、"セーフちゃん"はもっともっと増殖していかなければなりません。(黒猫)

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