現代書館

 また15巻の「人世坐大騒動顛末記」は、昭和34年1月から昭和35年9月までの文芸会館人世坐の労働争議の実態が三角寛自らの記録で綴られている。これは、娘婿の三浦大四郎氏宅でゲラ刷りが発見された。三角寛の人物を理解する上で貴重な資料である。

[著者紹介・編集担当者より]
 第一期の刊行後、沖浦和光著『幻の漂泊民・サンカ』(文藝春秋)、五木寛之+沖浦和光『辺界の輝き』(岩波書店)、『サンカの最新学』(批評社)、『別冊歴史読本・歴史の中のサンカ・被差別民』(新人物往来社)、『八切止夫選集』(作品社)等にみられるようにサンカ関係の出版物があい次ぎ、漂泊民、民俗学の再考がはじまったといえる。

 第一期は、三角寛による母念寺出版の『三角寛全集』(三角寛の没により十八巻で終わり、未完)を底本としたが、第二期は『全集』だけでは三角寛をカバーしきれず、国会図書館等で『婦人サロン』『オール読物』等に目を通す作業を行った。流行作家としての三角寛の発表雑誌は多岐に亘り、今後もすぐれた作品が発表される可能性が残されているといえるだろう。


三角寛サンカ選集第一期 全七巻
 1巻 山窩物語      定価2800円+税 現在7刷
 2巻 裾野の山窩     定価2800円+税 現在4刷
 3巻 丹波の大親分    定価2800円+税 現在2刷
 4巻 犬娘お千代     定価2800円+税 現在2刷
 5巻 揺れる山の灯    定価2800円+税 現在2刷
 6巻 サンカ社会の研究  定価5000円+税 現在4刷
 7巻 サンカの社会資料編 定価4500円+税 現在3刷


小社 三角寛関係好評既刊

『父・三角寛』三浦 寛子(三角寛の娘)著        定価2000円+税 
『いま、三角寛サンカ小説を読む』 サンカ研究会 編  定価2000円+税 
『つけもの大学〈新装版〉』 三角寛 著        定価2500円+税
『味噌大学〈新装版〉』 三角寛 著          定価2500円+税 
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 20世紀における最後の大物大衆小説家・三角寛の復権!!


 かつて大衆小説の黄金時代があった。三角寛はその一翼を担った流行作家である。作家としての活動期は昭和10年から17年のごく短期間であったものの、もし全集を編むとなれば優に四十巻を超えるものと思われる。それほど、当時の大衆は三角寛のサンカ小説に熱狂したといえるだろう。しかし、戦後は純文学を中心にした文学史は当然のこととしても、大衆文学史においてさえ三角寛のサンカ小説は黙殺されたままである。だが例えば、長編『裾野の山窩』などは現在ブームとなっている伝奇ロマン小説の原型と言って差し支えないだろうし、そのスプラッタ感覚は今なお新鮮な魅力を宿している。あるいは中・短編小説に置ける語り口は騙り口と言って良いほどのセンスである。そして、このセンスが『サンカの社会』においても発揮されていることは言うまでもあるまい。

 21世紀を迎えるにあたって、グローバルスタンダードとかIT革命とかいわれながらも、一方で大量のリストラ、貧富拡大などによる大衆の閉塞感は増幅し、先を見通せない時代のなかで、三角寛サンカ小説のもつ自由な精神を受け入れる土壌は拡がっている。三角寛を復権させる意義と条件はあらゆる意味で整っているのだ。

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