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WEBマガジン 14/02/10


web掲示板談話 斎藤美奈子・森達也 第二十回

件名 :都知事選問題のつづき
投稿者:斎藤美奈子  2014/2/8



 本日、2月8日。都知事選投票日の前日です。
 後出しジャンケンといわれないよう、いまのうちに書いておきます。

 ご多分に漏れず、私も候補者の「一本化」を望んでいましたが、それは不首尾に終わりました。こういう場合、有権者はどう動くべきか。
 (1)ひとりの候補者に票を集めるべく「戦略的投票行動」をとる。
 (2)あくまで信念に沿って「初志貫徹型投票行動」をとる。

 (1)の人はH氏の支持者に、(2)の人はU氏の支持者に多い気がします。ついでにいうと、H氏支持は中高年層、U氏支持は若年層に多いのがおもしろい。
 これは「政治経験の差」に由来すると思うんだよね。55年体制下の選挙をいやっというほど経験し、「死に票」の山を築いてきた世代は、選挙戦でも、市民運動でも、負け続けてきたわけじゃない? 少しでも「勝つ芽」があったら、そりゃ乗るよ。
 こういう態度をピュアな若者たちは「魂を売るのか」「小泉の新自由主義を容認するのか」「脱原発だけが焦点なのか」「Hの経済特区も容認するのか」とかいって批判するわけだけど、「玉砕しても正しい道を選ぶ」という発想は、旧日本軍のバンザイ突撃を思わせないでもない。美しく戦って美しく散るのが、そんなにいい? 3・11後の脱原発運動も、3年やってどうだったの? 大きな進展があった?
 平和という目的のためにはさ、ときには「汚い手」も使うんだよ、大人は。戦争を避けるには、妥協でも談合でも裏取り引きでも、何でもやるのさ。正義より実質なんだよ。負けたら元も子もないんだよ。……という風に(1)の人たちは考えるわけですが、その危機感は(2)の若い衆にはわからんのだろうなあ、と思います。

 ただし、H支持派(勝手連)の失敗は「候補者の一本化」を望むあまり、会見まで開いちゃって、事実上「あんたは勝てないから降りろ」とU陣営に迫ったことです。それはないだろ、とU派が憤慨するのも無理はない。いくら危機感から来たとはいえ、高名なジャーナリスや文化人がずらりと並んで「おまえは降りろ」と迫るんですよ。冷静に考えれば恫喝でしょう、そんなもの。
 ご自分たちは「私は一市民」と思っているだろうけれど、外野からは名前と地位に乗っていると見える。「知識人の発言」にみんながひれ伏した時代とはちがうんだよ。
 と、そんなことをやっているうちに「勝てる候補」だったはずのH氏の旗色も悪くなり、UとHの票を足しても、Mに及ばないかも、な状況になってしまった。

 で、ここから先が私の言いたいことです。
 戦況が変われば、戦果についての考え方も変えるべきです。
 もちろん番狂わせがあり、どちらかの候補が勝つなら、それに越したことはない。しかし、それが難しいのだとしたら……
 UとHの得票数がMを上回れば、暫定的な勝ちと考える。
 私はそう考え直しました。けっして妥協案じゃないからね。H氏が圧倒的に有利に見えた序盤戦ならいざ知らず、それが終盤戦における、もっとも現実的かつ前向きな選択なのです、民意を示そうと思うなら。
 いったんそう決めたら、互いにエールを送れるじゃん。選挙後だって「お互いによくやった」と抱き合って、「これからも頑張ろう」っていえるじゃない。それだけじゃなく「舛添が勝ったと思うなよ。民意は原発再稼働にも安倍政権にもNOなのだ」と訴え続けることができる。明日につながるんですよ「足せば勝つ」作戦は。
 そのうえで「戦略的投票行動」を促すなら、なおも促していけばいい。

 だいたいさあ「統一戦線のために」「涙を呑んで」「苦渋の選択」をする、みたいな悲壮感にみちみちた選挙運動なんかに、人はついてこないって。
 「百点の答案」を出してきたUと、答案用紙を破棄し脱原発に特化した「一芸入試」に賭けたHとは、もともとタイプがちがう候補者だった。
 「勝つ」が至上命令だったH派が日に日に暗くなっていくのに対し、最初から「負けてもともと(?)」だったU派は、日に日に明るく変わっていき、支持を増やしていったように思われます(開票してみないとわかんないけどね)。
 U氏が共産党と、H氏が小泉元首相とタッグを組んだのが、そもそもの混乱のはじまりともいえますが(両支援者とも、候補者ではなく応援団ごときにそこまで振り回されてどーすんだとも思いますが)、というわけので、9日の注目ポイントは「U+H>M」の目標が達成できるかどうかです。
 「ここで負けたら終わりだ」「これがラストチャンスだ」とかいうけどさ、負けたら声をあげるのをやめるのか。ちがうでしょ。もともと、予定になかった選挙なんだから、準備不足で当たり前。これしきの選挙ごときに将来を賭けるなよ。
 舛添が勝ったら、全国の人々から「「都民は愚民」と思われるでしょう。しかし、もともと東京は石原慎太郎を3度(4度?)も選んだ「愚民の集まり」ですからね。いまさら何が起こっても、驚かないし、腐らない。
 舛添要一が勝ったら、どうとっちめてやろうかと、私なんか今から腕まくりですよ。選挙期間中に、政党助成金不正流用疑惑から差別発言まで、あれだけスキャンダルが出てきた方です。都知事なんかになっちゃったら、どうなるか、むしろ楽しみだわよ。
 
 これがアップされるのは選挙後かもしれませんが、いまのうちに書いてみました。東京は大雪ですが、何か「よいこと」が起きることを祈念しつつ。



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