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寡黙なる饒舌

寡黙なる饒舌――建築が語る東京秘史

装幀 大森裕二

若山 滋 著
2020年7月9日発売!
判型
四六判 並製 224ページ
定価
1700円+税
ISBN978-4-7684-5883-9

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本書は、街並みの表層には現れない東京のディープなストーリーを探ろうとするものだ。
語り手は「建築」である。
そこに登場するのは、人間であり、事件であり、社会であり、文化である。建築を語るのではなく、建築が語るのだ。東京の主要な建築を選んで語らせよう。文化的な意味の強い建築を選んでいるが、それはある種特別な、華麗な空間であり、権力の空間であり、小津映画に登場する住宅とは対極にある。
(プロローグより)

建築家でもあり、文筆家でもある若山滋氏による、建築と権力、文化をめぐるエッセイ。本稿は「Yahoo!ニュース」の「THE・PAGE」欄に連載された「都市化の残像」を大幅加筆・修正し単行本化しようとするものである。

東京駅が皇居を向いて建設された理由など建築と権力の関係や、明治期に活躍したジョサイア・コンドル(ニコライ堂、帝室博物館、鹿鳴館などを設計)やフランク・ロイド・ライト(東京帝国ホテル、自由学園などを設計)などの外国人建築家とその弟子たちの手による建築物の紹介、そして辰野金吾や安藤忠雄、村野藤吾、篠原一男などの建築家の作風や建築観を詳解する。
軽くするすると読める筆致ではあるものの建築家ならではの鋭い視点が興味深く、知的好奇心を刺激される。

【著者紹介・担当編集者より】
1947年台湾生まれ。
東京工業大学建築学科卒業、同大博士課程修了。工学博士。
1974年入社の久米設計を経て名古屋工業大学教授。
米国カリフォルニア大学バークレー校、コロンビア大学客員研究員。
現在、中京大学客員教授、名古屋工業大学名誉教授。
専門は建築学・都市論・文化論。
著書は『建築へ向かう旅』、『組み立てる文化の国』、『「家」と「やど」― 建築からの文化論』、『漱石まちをゆく――建築家になろうとした作家』、『建築家と小説家――近代文学の住まい』『アイドルはどこから』など。2016年に『オリンピックとデザインの政治学』(森山明子との共著)を郎文堂より刊行。

建築学科の学生にこそ読んで欲しい。
特に第2、3章の建築と権力者の関係の分析や、第4章の建築界の巨匠評は読み応えがある。
また、本書の中で使用している写真およびスケッチはすべて著者によるもの。
建築家ならではの目配りが読みどころの一つ。単なる建築物紹介に留まらず、建築家の建物に対する思いやその建築が生み出した効果などにも言及する。
もうひとつの大きな読みどころとなるのは、各章末に書かれた若山滋氏自身の半生。Yahoo!ニュースなどの連載を持っている彼はこれまで自分語り的な文章は極力書かず、客観性を第一にしていたそう。そんな著者がいかにして建築家兼文筆家となったのかが書かれた書き下ろしエッセイは、ネットでは読むことはできない貴重なものであろう。


【目次】

T・天皇の街
東京駅――天皇の可視化
第一生命ビル(GHQ)――大屋根の権力・列柱の権力
築地本願寺――日本とギリシャ・快男児たちの気宇壮大
岩崎邸――華麗なる西洋館・その光と陰
ニコライ堂――ビザンティン文化の窓
漱石という建築――赤煉瓦のメランコリー
――戦争は人を生む――

U・モダニズムとテロリズム
日本工業倶楽部会館――モダン・アーキテクチャーと團琢磨暗殺
自由学園・明日館――ライトの遺品・自由が輝いていたころ
鳩山一郎邸――政治史に残る友愛と野人の巣
東京ミッドタウン六本木――大名屋敷が「街中街」をつくる
朝香宮邸(東京都庭園美術館)――宮家のアール・デコはモダンの桂離宮
帝室博物館(東京国立博物館)――天皇の家には宝物がない
――「壁と都市」の文化・「屋根と家」の文化――

V・槌音ひびく
吉田茂邸――戦後日本の方向を決めた「大磯もうで」
聖アンセルモ目黒教会――ボヘミアンが共鳴した木造文化
国立西洋美術館――巨匠ル・コルビュジエの苦悩と呪縛
東京文化会館――モダニズムに筋をとおす
国立代々木競技場――国家の建築家・丹下健三
パレスサイドビルディング――かつて工業は美であった
――風土と建築と文化の地理学――

W・世界の「やど」へ
雷門と日本橋――哀しみの底流・脱自動車都市へ
目黒区役所(旧千代田生命ビル)――村野藤吾・時代遅れが時代を超える
安藤忠雄の「壁」――地球に刻印した男
トッズ表参道店――伊東豊雄・風の建築家
すみだ北斎美術館――北斎の天分・妹島の天分
東京工業大学博物館百年記念館――篠原一男・疾走する孤高
――「家」制度の住まい・「やど」逸脱の住まい――

エピローグ・もう一つの世界都市として


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